会社勤めをしていたころは、多少お金が足りなくなってもカードローンでお金を借りることができましたが、年金暮らしになるとなかなかカードローンでもお金を貸してくれません。
まとまったお金が必要だが年金暮らしでは用立てる手段がない時、役に立つのが「年金担保貸付」です。
そこで今回は、「年金担保貸付」について紹介します。
■独立行政法人福祉医療機構の「年金担保貸付事業」
現在のところ、年金を担保にしてお金を貸す行為が認められているのは、「独立行政法人福祉医療機構」のみです。
「年金担保貸付事業」がそれにあたります。
▲いくら借りられるのか
まず、年金担保貸付事業でいくらまで借りられるかですが、限度額は10万円~250万円と定められています。
しかし、誰でも250万円満額を借りられるわけではなく、年金受給額に応じて上限が設けられています。
「年間でもらえる年金総額の範囲内」が、限度額のさらなる条件ですので、年間受給額が120万円の人は120万円が年金担保貸付の限度額となります。
さらに、「1回あたりの返済金額の15倍」と言う条件も加わります。
安定した返済ができるように、限度額もコントロールされているわけです。
▲使い道は
年金担保貸付事業の使い道にも、以下のように制限があります。
・保健・医療
・介護・福祉
・住宅改修など
・教育
・冠婚葬祭
・事業維持
・債務等の一括整理
・生活必需物品の購入
申し込みの際には、使い道を確認するための資料として「見積書」などが必要となります。
▲金利はいくらか
平成28年4月に、年金担保貸付の金利が変更となりました。
年金担保貸付、労災年金担保貸付ともに、従来より金利が0.1%上昇して、ぞれぞれ金利が年1.9%、年1.2%となっています。
▲必要書類は
年金担保貸付事業の借り入れ申し込みに必要な書類は、以下の通りです。
①借入申込書(取り扱っている金融機関の店舗に用意)
②年金証書
③現在の年金支給額を証明する書類(年金振込通知書、年金決定通知書、年金送金通知書、国民年金の支払いに関する通知書など)
④実印と印鑑証明書(発行後3か月以内)
⑤写真付きの本人確認書類(運転免許証、運転経歴証明書、パスポート、在留カード、特別永住者証明書、個人番号カード、住民基本台帳カードなど)
⑥資金の使い道を確認できる書類(見積書、請求書など)
▲どれくらいの期間で融資してくれるか
「年金担保貸付事業」は、金融機関申し込み締め切り日と融資日があらかじめ決まっています。
平成29年1月~3月の予定は以下のようになっています。
金融機関申込締切日 | 融資予定日 |
1月4日 | 1月27日 |
1月12日 | 2月6日 |
1月26日 | 2月17日 |
2月2日 | 2月24日 |
2月14日 | 3月8日 |
2月22日 | 3月16日 |
3月2日 | 3月27日 |
以上を見ても分かるように、申し込み締め切りから融資予定日までは3週間~4週間程度はかかります。
ある程度予定を立てた上で申し込むのが賢明です。
▲返済は
年金担保貸付事業での借入金は、借入金を受け取った月の翌々月以降の偶数月から始まります。
通常は年金支給機関から年金が受け取り口座に振り込まれますが、年金担保貸付事業を利用していると、その全額をまず独立行政法人福祉医療機構が受け取ります。
そのうち返済分を差し引いた残りの金額を利用者の受け取り口座に振り込みます。
繰り上げ返済も可能ですが、繰り上げ返済を受け付ける日が「毎月20日」となっていますので、この日に取扱金融窓口へ行って手続きをしてください。
物価スライドなどで年金額が少なくなったとしても、返済計画に変更はありません。
独立行政法人福祉医療機構が天引きをした後で戻ってくる金額が少なくなるだけです。
注意したいのは、介護保険料や国民健康保険の保険料を年金から直接納めている場合です。
年金担保貸付事業を利用している間は、年金から直接納めることができませんので、各自が役場へ行って納めることとなります。
■年金担保貸付事業以外の方法は?
▲年金受給者専用のローン
「年金担保貸付事業」以外にも、年金受給者が利用できる貸付はあります。
たとえば、ゆうちょ銀行には「したく」と言うローンがあります。
70歳未満で安定した収入(年金収入も含む)があれば利用可能で、ゆうちょ銀行や提携金融機関のATMから自由にお金を借りられます。
ただし、年金担保貸付事業に比べるとだいぶ高金利です。
▲偽装質屋
テレビのニュースを一時期騒がせた「偽装質屋」は、特に年金受給者の利用が多いそうです。
二束三文の品物と年金手帳やキャッシュカードを担保に融資をするものですが、年金を担保にしてお金を貸していいのは、独立行政法人福祉医療機構だけですので、もちろん違法です。
年100%以上の高金利で、しかも質流れがないなど、質屋の名を借りた闇金融ですので、絶対に利用しないでください。
■まとめ
いかがでしょうか?
年金受給者がお金を借りる選択肢は、さほど多くないものです。
もしお金を借りるなら、「年金担保貸付事業」のように認められたところから借りるのがいいですが、できれば計画的にお金を管理して貯蓄をしていくのがいいでしょう。