【いまさら聞けない】『生活保護』のことを知ろう

日本国憲法第25条には、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」との条文があります。
最低限度の生活を行なうためにはお金が必要ですので、この憲法の主旨に則って生活費などを支給する制度、それが「生活保護」です。
生活保護法第1条には、「この法律は、日本国憲法第25条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」ともあります。
今回は、そんな生活保護の基本を紹介します。

■生活保護のメリット

●支払いや税金が免除される
生活保護が適用されますと、通常は支払わなければならない以下のような各種料金や税金が免除されます。

・NHK受信料
・国民年金保険料
・各種医療費
・住民税
・所得税

●保護費によって日常生活が送れる
支給される生活保護費は、以下の8つの目的に利用できますので、日常生活は送れます。

・医療扶助:国民健康保険からは脱退となるが、それと同様の医療を現物支給によって受けられる。
・生活扶助:飲食物や高熱水道費、移送費などが支給される。
・教育扶助:義務教育に必要な費用を現金で支給される。
・住宅扶助:家賃や修繕などの支払いの必要がある際、現金で支給される。
・介護扶助:要介護もしくは要支援と認定された受給者に対して、現物支給という形で行われる。
・出産扶助:指定助産施設以外(自宅出産など)の場合のみ、現金で給付される。
・生業扶助:技能取得や就労に必要な費用として、現金で支給される。高校修学もこの扶助で支給。
・葬祭扶助:葬儀を行なう必要がある際、現金で給付される。

●意外と多い支給額
支給される生活保護費は全国一律ではなく、地域の生活様式や家族構成、物価などを考慮しています。
まず「最低生活費」を算出し、そこから収入を差し引いた金額が、実際に支給される生活保護費です。
以下のように、地域や家族構成によって、生活扶助費だけを見ても支給される費用にかなりの違いがみられます。

・子ども1人を含む3人家族:158380円(東京都区部)、129910円(地方郡部)
・単身世帯の高齢者:74630円(東京都区部)、60310円(地方郡部)
・3人家族の母子世帯:188140円(東京都区部)、158170円(地方郡部)

以上を見ても、意外と支給額は多いです。

■生活保護のデメリット

お金を無償でもらえる生活保護ですので、それに伴いデメリットは存在します。

●貯金できない
支給される生活保護費を切り詰めて貯金しようとも考えますが、それはできません。
生活保護法の中には、生活保護受給者の義務というのが記載されており、その一つに「費用返還義務」があります。
生活できるだけの資力がありながら保護費を支給されたら、返還しなければならないのです。
貯金は「生活できるだけの資力」に該当するため、貯金はできません。

●一時的な収入も申告しなければならない
臨時収入があった場合、それを申告しなければなりません。
申告した上で返還するかどうかは判断が分かれます。
パチンコや競馬の儲けは、全額返還しなければなりません。

●車を持てない
自動車は高額商品の代表格ですが、生活保護受給者は高額な品物を購入できません。
ただし、公共交通機関の発達していない地域では、車が重要な生活の足となっているため、認められる場合が多いようです。
その他の高額な家電なども、生活必需品と判断されれば認められます。

■生活保護受給に伴う義務や制限

生活保護を受給すると、デメリットだけではなく果たさなければならない義務も生じてきます。

●収入を申告する義務
生活保護受給中は、毎月の収入を申告しなければなりません。
臨時収入があった場合はもちろん、収入がない月も申告します。
過少申告すると、保護費の返還や最悪ですと受給が廃止されかねません。

●ケースワーカーの指導を受ける義務
生活保護を受けている間は、ケースワーカーから指導や指示を受けます。
受給者の自由や意思を尊重した上での指導や指示に従わないと、受給が停止されたり廃止されたりする場合もあります。

●住まいの制限
賃貸住宅に住む場合には住宅扶助が支給されますが、上限額が決まっていますので、その範囲内で妥協しなければなりません。
引っ越しをする際には、事前に届け出をした上で認められれば、引っ越し費用や敷金は支給される場合が多いです。

●病院の制限
生活保護受給中は、自己負担なしで医療行為を受けられますが、その病院は指定医療機関でなければなりません。
ただし、救急の場合はこの限りではないこともあります。

■生活保護申請の流れ

実際に生活保護を申請した場合はどうすればいいのか、ここではその流れを説明します。

①あらかじめ相談する
申請をする前に、居住地を管轄する福祉事務所の生活保護担当に相談をします。
生活保護の説明とともに、生活保護以外の助成制度や補助制度の説明もあります。

②申請する

③調査する
申請をされた方については、家庭訪問や資産調査、扶養の調査、年金や就労収入の調査、就労の可能性の調査などが実施されます。

④生活保護費の支給

■生活保護に必要な書類

生活保護を申請する際には、実は特別必要な書類はありません。
ただし、資産調査をよりスムーズに行なうためにも、通帳の写しや給与明細など資産状況が分かる書類を準備しておくといいでしょう。

■生活保護受給中に借金はできるか

生活保護を受給中にどうしてもお金が足りなくなった場合、どこからかお金を借りたくなりますが、実際のところそれは可能なのでしょうか?

●クレジットカードやカードローンを取得できるか
クレジットカードやローンカードを新規に取得するためにネックとなるのが、「安定した収入」です。
ほとんどのカードにはこの一文が盛り込まれています。
ちなみに、支給された保護費は「収入」ではありません。
安定した収入があれば、そもそも生活保護は受けていませんので、審査以前に申込条件を満たしていないので、持つことはできないでしょう。

●受給前に取得したクレジットカードやローンカードは使えるか
インターネットサイトなどを見ますと、受給前に取得したカード類については「バレなければ問題なく使える」と書かれていますが、これはあまりにも無責任です。
確かに、カード会社からカードの返還要求はありませんので、物理的には使えます。
しかし、生活保護の調査の際に、クレジットカードの有無は間違いなく聞かれる項目ですので、その時点で虚偽申告です。
ローンカードは借金という認識があるでしょうが、クレジットカードのショッピングも「後払い」という借金です。
保護費は借金返済には回せませんので、受給前に取得したカード類も使えないというわけです。

●ばれたらどうなる?
クレジットカードやローンカードを持っていることがばれたら、あるいはそれを使って借金していることがばれたらどうなるでしょうか?
前者の場合、最も多い処置としてはケースワーカーや役所がカードを預かる処置です。
借金していることがばれたら、最悪受給の停止という処置もあり得ます。

■それでもどうしてもお金を借りたい場合は

●生活福祉資金制度を活用
それでもどうしてもお金を借りたい場合には、「生活福祉資金制度」を利用するといいでしょう。
対象者は低所得者、高齢者、障害者で、金利は年1.5~3%(連帯保証人がつくと無金利)、限度額は用途によって細かく設定されています。
順番としては生活保護を申請して、その網からこぼれ落ちてしまった人を救済するのが、生活福祉資金制度ですが、併用している人も多いのが実状です。

●デビットカードを作る
インターネットでお得な日用品を購入したいが、クレジットカードが必須。
生活保護受給中はカードが持てないのでネットで買い物ができない、とお悩みの方は、デビットカードがいいでしょう。
デビットカードは、利用した分だけ口座からすぐに引き落とされるカード。
後払いではなく口座の残高以上は利用できないので、借金にも該当しません。
生活保護受給者でも発行可能ですし審査もありません。

保護費によって最低限の生活が保障されるメリットは大きいですが、それ以上のデメリットや義務、制限が付いて回ります。
申し訳ない、恥ずかしいという気持ちから申請をためらっている方もいますが、生活再建のためにはぜひ活用したい制度です。

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